咳を主な症状とする病気に、咳喘息とにたような病気でアトピー咳漱(atopic cough:AC)というものがあります。
しかし咳喘息とアトピー咳漱は実は違った病気で、治療も違いますので、二つを鑑別することは大切なことです。
慢性の咳を主症状とする患者さんのうち、咳喘息とちょっと違う人がいる、というのが元々のアトピー咳漱という病気が分かった理由です。
これらの人はアトピー素因というものを持つことが多く、その結果、アトピー咳漱と命名されました。
アトピー咳漱・目次
1.アトピー咳漱ってどんなもの
2.アトピー咳漱の症状ってどんな感じ
3.アトピー咳漱の病態
4.アトピー咳漱の診断
5.アトピー咳漱の治療
アトピー咳漱ってどんなもの
咳喘息とアトピー咳嗽の違いについてかんがえてみます。
気管から気管支へと空気の通るところは細くなっていきますが、炎症の起こるところが、かなり中枢の太いところで起こるものがアトピー咳漱です。
そこで、咳受容体の感受性が、亢進。つまり、中枢の太いところで、普通の人なら咳を起こさない程度の刺激があっても咳になってしまう。これがアトピー咳漱です。
一方で、咳喘息は、もっと末梢の方で、気管支の過敏性が高まっていて、咳がでるのが咳喘息になります。
この時、喘鳴も伴うようなものを気管支喘息といいます。
アトピー咳漱の症状
臨床的な特徴、つまりは症状としての特徴は
1. 8週間以上のイガイガ感を伴う持続的な咳で、痰はないかわずかです。
2. 喘鳴や呼吸困難はありません。
3. 咳は、就寝時、深夜から早朝、起床時に多い。
4. 咳は、エアコン、タバコの煙(受動喫煙)、会話(電話)運動、精神状態などで誘発されやすい。
5. 鏡せいて咳をしても、吐き出すときに聴診で異常音(ラ音)が聞こえない
6. アトピー素因を認めることが多い。
7. 呼吸機能検査は正常
8. 気道の過敏性の亢進は見られない
9. 咳受容体感受性の亢進
10. 誘導喀痰の中に好酸球が見られる
11. 気管あるいは気管支生検にて大部分の患者で好酸球性気管支炎が見られる
12. 気管支肺胞洗浄という検査で、洗浄液中に好酸球は増えていない
13. 治療ではヒスタミンH1拮抗剤(塩酸アゼスラチン、テルフェナジン、ケトチフェンなど)、ステロイド剤の吸入、内服が有効。抗ヒスタミン剤もやや有効。ただし、鎮咳剤(いわゆる咳止め)、抗生物質、気管支拡張剤(β2刺激剤、テオフィリン)は無効。
アトピー素因とは
1)血液検査で好酸球というものが多い
2)血清の抗体 IgE というものが多い
3)血清の病気に特異的な IgE 抗体も多い
4)アレルゲン皮内テストが陽性になる
5)喘息以外のアトピー疾患の合併または既往がある
という特徴を指します
アトピー咳漱の病態
検査をするとどんな感じかですね。
気管支拡張剤を使っても、一秒量(一秒でハッと息を吐く量)は増えない
ピークフローメータで検査しても、一日で変動が少なく5%以下
気管支肺胞洗浄といって、内視鏡で気管支の中を洗った液の中に好酸球は増えていない
この病気の人は痰がでません。そこで検査のために食塩水の吸入を行って痰を出す、誘発試験を行います。この結果、出てくる痰の中に好酸球が認められようになりますが、咳喘息や気管支喘息よりは少ないです。
などです
アトピー咳漱の診断
この病気を診断するための基準です
1,喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)を伴わない咳が8週以上続く
2,アトピー素因を示唆する所見または誘発喀痰中好酸球増加の一つ以上を認める
3,気道可逆性が陰性(気管支拡張剤を使っても、1秒量の増加は10%以下)
4,気道過敏性が正常範囲
5,咳感受性が亢進
6,気管支拡張剤が無効
7,胸部レントゲン写真で異常がない
8,呼吸機能検査が正常
の八つ全部を満たすものをアトピー咳漱と診断する。
また、咳喘息と同様にもっと簡単に診断しようという試みもあります。
その時には
1,喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)を伴わない咳が3週以上続く
2,気管支拡張剤という薬が効かない
3,アトピー素因を示唆する所見または誘発喀痰中好酸球増加の一つ以上を認める
4,ヒスタミンH1拮抗剤または/およびステロイド剤で咳発作が消失
の四つを満たせばアトピー咳漱して治療をする、というものです。
アトピー咳漱の治療 療
ヒスタミンH1拮抗剤が60%の人に有効といわれています。
これで治らない40%のひとはステロイド剤の吸入(ベクロメタゾン 800μg/一日、フルカチゾン 400μg/一日)や、ステロイド剤の経口投与(プレドニゾロン 20mg/日)が必要なことが多いといわれます。
治療の効果については、大分部の患者さんで2週間で咳が軽快するといわれています。
アトピー咳漱は咳喘息と違って気管支喘息になることはまれと言われているので、一旦咳が軽快したら継続的な治療は不要と考えられています。